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名古屋高等裁判所 昭和53年(行コ)25号 判決 1979年2月28日

控訴人(原告) 種村一博

被控訴人(被告) 穴太土地改良区

主文

本件控訴を棄却する。

控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

一  控訴人は「原判決を取消す。本件を津地方裁判所もしくは津地方裁判所四日市支部に差し戻す。」との判決を求め、被控訴人は主文同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の事実上、法律上の主張は左に付加するほかは原判決事実摘示と同一であるからここにこれを引用する。

(控訴人の主張)

(一)  原審は被控訴人の訴訟代理人の資格を有していない豊田武男提出の答弁書による申立を採用して判決しており民事訴訟法一八六条に違反する不当な判決である。なお本件では被控訴人が提出した答弁書は存在しない。

(二)  被控訴人の換地計画は、土地改良法五二条五項にもとづく会議において議決された後に同法五二条八項の東員町農業協同組合の同意書の交付を受けて三重県知事に認可申請されたものであり、現在は却下されているが、組合員や理事が被控訴人土地改良区内において訂正を求めることは不可能である。このことは行政事件訴訟法三六条に該当するものである。

(三)  法律によつて設立認可を受けた他の法人で最終議決が訴訟の対象となり得ない法人は存在しないにもかかわらず、土地区画整理事業の場合のみ不適法な訴とするのは憲法一四条一項に定められた法の下の平等に反するものである。

また知事の認可前の換地計画の無効確認の訴が不適法であるというのであれば、知事等の許認可を必要とする他の法人(特に営利会社)が議決した場合の訴訟も不適法といわなければならないが、営利会社等の法人が知事の許認可を必要とする事業をなす旨の議決を為した場合には訴訟の対象となつているのである。

(四)  本件のような訴を不適法であるとするのは昭和四一年二月二三日の最高裁判所判例の考えによるものと考えられるが、右判例は、土地区画整理事業においては知事の認可があるまで訴を提起することを認めないものであつて憲法三二条に違反する不当なものである。

したがつて右判例に拘泥することなく、被控訴人土地改良区のなした土地区画整理法五二条五項による決議が無効であるか否かについて審理判決することを望むものである。

理由

当裁判所も控訴人の本件訴は不適法として却下すべきものと判断するが、その理由は左に付加するほかは原判決の理由と同一であるからこゝにこれを引用する。

(一)  土地改良法は、知事の認可にあたつて換地計画について詳細な審査を行つてその適否を決定し、関係者による異議申立手続を経由すべきものとしている(同法五二条の二、三、四)のであるから、認可前の換地計画を行政事件訴訟法の行政処分であるとして無効確認訴訟もしくは取消訴訟の対象とする必要はないというべきである。

(二)  控訴人の本訴請求は、控訴人と被控訴人改良区の間の私法上の権利関係法律関係の存否を対象とするものではないことが明白であるから、本件訴訟を民事訴訟と解し適法な訴とみることもできない。

なお訴が適法であるか否かは当事者の申立をまつまでもなく裁判所が職権で判断すべきことがらであるから、本件訴を不適法と判断した原判決が民訴法一八六条違反のそしりを受けるいわれはない。

よつて、右と同旨の原判決は相当であつて本件控訴は理由がないからこれを棄却すべく民事訴訟法八九条九五条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 綿引末男 三浦伊佐雄 高橋爽一郎)

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